AR技術で伝統工芸品の保護に挑戦する宮川香山 眞葛ミュージアムの取り組み

宮川香山 眞葛ミュージアム「 みる ふれる 眞葛焼 -DXで鑑賞する眞葛焼- 」にて同館を運営する株式会社三陽物産様にpalanARをご利用いただきました。
今回は、株式会社三陽物産の企画デザイン室部長、野海道様にこちらの施策について取材させていただきました。

ARやデジタル技術の取り組みのきっかけについて教えてください。

株式会社三陽物産は洋菓子の製造と卸売業等を行い、「お菓子を通じて横浜の歴史・文化を継承する」というスローガンを掲げている会社です。横浜の歴史的資産を保全する活動の一環としてミュージアム事業を行なっています。
「眞葛焼」は、明治期の横浜で陶芸家・宮川香山によって制作された輸出向けの陶磁器で、現在はその現存数が少ないこともあり“幻のやきもの”と呼ばれています。
宮川香山 眞葛ミュージアムでは、横浜の歴史的資産である「眞葛焼」を常設展示し、作品の保護と普及に努めています。

私はそちらのミュージアムの企画デザイン室の部長として、展示の企画やデザイン関連業務を担当しているのですが、一昨年前に、あるご縁から、バーチャルミュージアムとして眞葛焼きの3Dスキャンを行い、ウェブサイト上で展示する試みを行いました。

こちらがデジタル技術の取り組みの第一歩となったのですが、今年度はこれらの経験を生かし、眞葛焼きの3Dスキャンデータを活用して何か新しいことができないかと考えていました。
AR技術は今あるデータを活かすことができ、さらに眞葛焼きの複雑な作りや迫力をよりしっかり伝えられると感じ、AR技術の活用を決めました。

みる ふれる 眞葛焼 -DXで鑑賞する眞葛焼-.png (261.1 kB)

施策概要を教えてください。

「みる ふれる 眞葛焼 -DXで鑑賞する眞葛焼- 」という特設企画展示にて、通常ガラスケース越しでしか鑑賞することができない眞葛焼を、DXを活用してあらゆる角度から見て触れることができる特設企画展示を開催しました。
今回は、ARを使った「デジタル」な展示と3Dプリントで眞葛焼きのレプリカを作成したので、そちらのレプリカの「リアル」な展示と両方を楽しめるものを目指しました。

眞葛焼き1.png (276.7 kB)
眞葛焼き2.png (248.9 kB)

「デジタル」な展示では、眞葛ミュージアム内特設スペースにあるテーブル上のQR コードを、お手持ちのスマートフォンやタブレットで読んでいただくと、原寸大の眞葛焼3D ARが出現するようにしました。
画面内で眞葛焼を回したり、拡大・縮小したり自由自在に見ていただけるようにしてます。

「リアル」な展示では、眞葛焼を3Dスキャンし、高さ30センチの3Dプリントレプリカ1点を作成し、来場者の方に自由に真葛焼を触っていただけるようにしました。

他にも、特設のホームページの方でもお試し版として、真葛焼が1点だけ見れるようにし、プロモーションのようなものとして活用しました。

当日の展示スペースでの様子.png (281.7 kB)

実際のミュージアムでの反響ですが、palanARのAR内での写真撮影機能を利用し、来場者は眞葛焼きとの写真を撮影でき、こちらは大変好評でした。
他にも、「普段見られない角度から眞葛焼きを楽しむことができた」との声が多く聞かれ、反響も非常に大きかったです。

また、伝統工芸品の保護という観点でも活躍してくれたと思っています。
眞葛焼はデザインが非常に細かく、壊れやすいというの性質がありました。また、地震が多い地域でもあるので、いつ本物が壊れてしまうか分からないという心配もありました。ARを使うことで、デジタルのデータとして伝統工芸品を「保存」し、さまざまな方に楽しんでいただけるという状態にできたこともよかったです。

palanARをご利用いただいた理由・決め手はなんでしたか?

palanARを選んだ最大の理由は、そのpalanARのサンプルページからのインスピレーションです。
最初にこの「眞葛焼き」のARを作ったのですが、サンプルの動画を眺めていると「こういう使い方ができるんだ!」という発見があり、色々なアイディアが湧いてきました。

例えば、眞葛ミュージアムがあるまちが、ヨコハマ ポートサイド地区という場所なのですが、そのまちのアートを紹介するARマップを作成したりもしました。

ヨコハマ ポートサイドのARマップ.png (321.7 kB)

ヨコハマ ポートサイド地区は「アート&デザインのまち」というコンセプトで、まちの至るところにアートが散りばめられているんです。

こちらのヨガのサンプルを見た時に、palanARでできることの豊富さを実感し、マップなども作ることができました。

他にも、無料枠があることと、使い勝手の良さというところも大きかったです。

他社さんのツールも使ってみたのですが、うまく設定ができず、使いづらいなと感じましたが、palanARは使い勝手のも操作性も良いと感じました。

今後どのようにARを活用していきたいとお考えですか。

今後の企画では、来場者の方がARで自分だけの眞葛焼きをデザインできるインタラクティブな展示も構想中です。
他にも、花瓶などの陶芸作品を扱ってるので、そのレプリカにかざした時にお花が添えられるといった演出ができたら良いなと思ってます。

他にも、塗り絵ARのようなに、眞葛焼きのベースとなる白地の花瓶があり、紙にイラスト書いてそれを読み込むと花瓶にそのデザインが反映されるとか、そういったものもやりたいですね。


▼ 宮川香山 眞葛ミュージアム
http://kozan-makuzu.com