ARを活用して子供達の「思考力」を伸ばす授業実践へ、理科教師の挑戦

文部科学省が昨年度より提唱している「特定分野に特異な才能のある児童生徒に対する学校における指導・支援の在り方」の研究発表として東京学芸大学付属小金小学校の理科の授業にてpalanARをご利用いただきました。
今回は、こちらの取り組みについて東京学芸大学付属小金小学校の小林先生を取材させていただきました。

ARの取り組みのきっかけについて教えてください。

東京学芸大学付属小金小学校で、現在6年生の担任をしています、小林です。
通常の小学校では全ての教科を1名の担任が教えるという形が多いのですが、本校は各教科の専門性を持った教員が勤務するという少し特殊な学校で、私は理科を専門にしています。

今回、私の研究発表にARを使った授業というものを取り入れたいと考えていました。
理科のAR教材の実事例は非常に少なく、昆虫をARで出して回転させながら観察するという「観察用途」のものが多いと感じました。
そこで、ARを活用して子どもたちに観察だけではなく、「思考」してもらう授業を実施すると新規性もあり、面白いのではないかと考えました。

実施された授業について教えてください。

研究発表でしたので、全国から150-200名ほどの教職員の方に見ていただきながら授業を行いました。
内容は地層に関する授業です。例えば、自分が住んでいる、今いる場所の地下の地層がどうなっているのか?というのを柱状図を使って考えるという授業です。

本校の周りの柱状図を5つほどピックアップし、子どもたちにはその中の4つの柱状図を渡します。
子どもたちはその4つの柱状図をヒントに、渡していない1つの柱状図を謎解きのような形で考えてもらう授業でした。

もともと、柱状図の模型の上にGoogleマップ写真を貼り付けて考えてもらうという実践授業はあったのですが、現実の地面の起伏がどうしてもこの方法だと表現できませんでした。
現実の地面はもっと凸凹しているし、高いところも低いところもあるのに、それが今までの実践だと平面に見えてしまっていました。
これだと子どもたちに嘘を伝えてしまうと思ったので、この課題を解決するために色々と考え始めたのがきっかけです。

ただ、子どもたちに地層を実体験してもらうことは実は結構大変です。
一番シンプルに、学校の周りの地層を体験してもらえればと思うのですが、地層が露出しているところが限られています。
やり方の1つとして、VRゴーグルを使って地層や川の形を擬似体験する形式はあるのですが、VRは導入費が高くなかなか現実的ではありませんでした。
それだったら、QRコードを読み取ればすぐにできるっていうpalanARさんのARはとても良いなと思い、活用を決めました。

ワンクリックで90°回転したり、カメラボタンもあるので、使ってみたらすごく便利だなと思いました!

当日も広い会場だったのですが、クラスの子どもたち35人が自分のMicrosoft Surface Go 2でARを楽しく体験してくれていました。

実際の授業後、すごく反響がありました。
授業自体も子どもたちが非常にポジティブな反応が多かったですし、「見えない地面の下を、仮想空間で見える」ようにできるにARという技術の持つパワーを感じました。
ただ、子どもたちに体験してもらった際に、少しARが場所によってはどんどん小さくなっていってしまう現象が起きたので、そちらは改善していきたいです。

さらに、AR教材を教職員が作るっていうことが今までなかったので、それができちゃうのがすごいなと思いましたね。
自分でもびっくりしたんですが、やってみたら全然難しくなくて1時間くらいでモデリングとARの実装含めてできたのが嬉しかったです。
モデリング部分は「Metasequoia 4」で行い、ARの実装部分をpalanARで行いました。

palanARをご利用いただいた理由・決め手はなんでしたか?

授業で使うというのもあり、他の製品なども見たり、試したりしました。
学校向けのプランがあるものもあり、そういうサービスを最初は使おうと思っていたのですが、実際に使ってみると全く直感的じゃなかったんです。

コードを組んでARを作るというものもあると思うんですけど、我々のような学校の教員にはそういうスキルを習得する時間がないんです。
導入の難しさで困っていのですが、palanARを見つけカスタマーサポートに連絡しました。
色々と説明を受けたのですが、その時に他のARサービスは粘土のようになんでもできるけど、その分プログラムを組まないといけないのに比べ、palanARはブロックのようにあるものを組み合わせてできるんだと感じました。

専門的な知識のある方が、ARを触ったことのない人のために考えられているんだと思って、「これはいい!」と思いました。
実際に、palanARはクリックアンドドラッグで動かせたり、座標を決めるだけでARが作れたり、全然使いやすさが違いましたね。

今後どのようにARを活用していきたいとお考えですか。

本校の展覧会が行うことがあるのですが、体育館にかざすと大きなキャラクターや先生が出てきたり、案内板が出てきたりみたいなことができると良いなと思います。
他にも作品スペースと天井の間に活用できないスペースなどがあるので、そちらにARで仕掛けを作れると面白いなと思ってます。

編集後記

palanARのAR Winter Challenge 2023用に、東京学芸大学付属小金井小学校様でワークショップも開催させていただきました!

6年生のクラスの学生さんに、palanARスタッフが2名で伺い、ARについての講義をさせていただいた後、実際にARを作り、体験していただくワークショップを行いました!
学生の方からは「面白い!」「思い通りに動いて可愛い!」といった感想もいただけました!

授業のお写真